●日本酒の低価格化が進んでも山田錦を使う高級酒はなくならない
神戸:長い間に築かれた歴史や文化を壊さずに新しいものにチャレンジすることは、我々JAにとっても大変重要なことだと思います。
日本の景気が思わしくないのと連動して、今は日本酒全体の消費量も下降傾向にあります。そんな中で特に山田錦をたくさん使われる高級酒は今後どのようになるとお考えでしょうか。お酒が売れなければその原料である山田錦の需要も減るとになりますので、ぜひこの辺りについて忌憚のないところをお聞かせください。
永野ゼネラルマネージャー(以下永野):確かに日本酒の消費量は落ちており、価格的にも1.8リットル2,000円や3,000円の酒の出る量は減ってきて居ます。
その分安価な紙パックの酒に需要が移っている事は否めません。安い酒と言っても昔とは違い技術が進んでいますので、決して美味しくないわけではありません。
言うならば高品質・低価格が当然のようになって来ていますので、コストを単純に価格に転嫁することが出来ませんのでかなりつらいところですね。
しかし、JAみのりさんのような兵庫県の山田錦に関しては、あまりご心配はいらないと思います。
まず山田錦を使って造られるような大吟醸や吟醸と言う高級酒は、もともと日本酒全体の数パーセントでしかないわけです。純米酒を加えても10%少々だと思います。これらの日本酒はフランスのワインに匹敵するお酒ですので、これからもお客様に飲んでいただきたいし、飲んでいただけるように努力しなければならないと思います。
浜田: 紙パックの酒への移行が兵庫の山田錦の需要に多少は影響するかも知れませんが、灘五郷の蔵元ではこれまで当社も含め普通酒にも兵庫の山田錦を使う仕込みをやって来ました。少なくとも瓶のお酒には、これからも兵庫の山田錦を使っていきたいと思っています。
蛇足になりますが、出来たお酒の酒質は無論のこと、精米時の歩留まりの良さ、酒造好適米としての効率の高さを考えれば、経営的にも使って行きたいですね。兵庫の山田錦には、お米自身に力があります。
神戸:心強いお言葉ありがとうございます。
確かに山田錦を含めた酒米の需要は、日本酒全体の消費が回復しない限り仕方がないことですね。
私たちはこの「山田錦倶楽部」を発足させることにしたのは、一般消費者の方にもっと日本酒に関心を持っていただきたい、そして日本酒全体への関心が高まることによって、日本酒を買って下さるきっかけになるのでは、との思いからです。
ただ、本音で申しますと、山田錦を今の価格で少しでも多く買っていただきたいと言うことです。
永野:兵庫の山田錦はお酒を造る側にとっても大切なお米だと思いますが、今後安い値段でそれ以上の品質の酒造好適米が出て来たら話は別です。今こうしているときにも新しい品種が出て来るかもしれません。我々としては今、最良のものとして兵庫の山田錦を使っているわけですから。
浜田:これまでにもいろんな酒造好適米が出てきたけれども、ほとんどは長続きしなくて消えて行きました。山田錦は生まれてから何年になりますか、昭和の初め頃でしたね。
神戸:昭和11年(1936年)に品種が固定してからですから、もう65年程経っていることになりますね。
浜田:65年間、米の性質が安定しているというのは驚きですね。その間、山田錦に匹敵する酒米が出現していない以上、山田錦の性質をこれからもしっかり守っていただきたいですね。
神戸:兵庫県の場合、酒造好適米の品種改良は酒米試験地(兵庫県農林水産技術総合センター農業試験場酒米試験地 所在地:兵庫県加東郡社町)で行っていますが、新しい技術も開発され、品種の改良の期間短縮だけでなく、数年前にはかなりの量がなければ出来なかった醸造試験も、今はほんのわずかな量で出来るようになったようです。
ただ、今のところ山田錦を超える新しい品種は発表されていません。
もちろんそれに安住することなく、生産農家には色々と指導しています。
例えば、植物は、固定した品種であっても何代も栽培を重ねますと、元々持っている性質が変化するものです。
そこで山田錦本来の性質を維持するために種子更新を2年と決めて指導しています。また、安定して種籾(たねもみ)を提供するために、JAみのり管内には採取穂場も持っております。それに農家も収量を目指すのが人情というものでしょうが、敢えて肥料を抑え収量よりも品質を追求するよう努力してもらっています。
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