灘の蔵元巡り 第5回:菊正宗酒造株式会社
常務取締役 原 昌道氏
●菊正宗と兵庫の山田錦
左:原常務 右:神戸組合長
神戸:私たちJAみのりでは「菊正宗」と言えば、明治時代から続いている酒米の契約栽培制度とでも言いましょうか、「村米制度」と「嘉納会」の名前が出てくるのですが。

原:明治24年(1891年)に、現在のJAみのりさんのエリアになります美嚢郡吉川(みのうぐんよかわ)村内で、地元の篤農家のグループと当社の間で、飯米と較べれば収量は少ないが酒造りに適した米を計画的に作り、これを蔵元が引きとると言う村米制度が開始されました。「白鷹」さんも当時から吉川村の農家と取引をされていました。
その後、昭和2年1927年)に吉川村周囲の5つの地域で菊正宗の為に酒米を作っていただくグループが「嘉納会」として発足し、今では16地域395農家に発展しています。

神戸: 菊正宗さんには毎年、山田錦をたくさん使っていただいております。山田錦は昭和初期に酒造好適米として品種が固定し、それ以来70年の時間が経ちましたが、未だに山田錦を超える品種が見つからないようですね。
原常務


原:山田錦の酒造りに適した特性を挙げて見ますと、まず第一に米粒が大きく、色白かつ光沢のある米で、表皮は薄く、精米しやすい。二番目に米にねばりがあり精米、その他の工程での砕けが少ない。三番目として水を吸いやすく、糖化性(米の糖化されやすさ)がよい。四番目には比較的大きい心白(米の中心部に澱粉の集積が少なく、白く見える部分)があり、そのため麹菌の菌糸が米粒内部に入りやすく、酵素力の強い麹ができる。そして五番目として蛋白含有量が小さく、すっきりとした味わいの酒質が得られることとなります。
また、山田錦の栽培は難しく、その米質は土地、風土、栽培方法によって著しく左右されますから、全国で山田錦を育てようと試みられましたが、あまりうまく行っていません。 ワインでも、有名なシャトーの良いブドウ畑を昔から決めて守っています。その伝統は100年以上続いております。
それで「原産地格付け」とでも言いますか、「アペラシヨン・コントローレ」と言ってブドウの品種だけではなく、造られたワインに対する採れたブドウ園での格付け制度があります。兵庫の山田錦で仕込んだ日本酒にも、「シャトー・マルゴー」のように非常な高値で評価されるものが出てきて良いのではないでしょうか。

神戸:「菊正宗」さんでは山田錦を吟醸酒だけでなく、一般酒にも使われているんですね。


摺り作業(菊正宗HPから)
原:そうです。大吟醸酒はここ20年ほど前から造っていますが、そのはるか前から、普通酒製造に山田錦を使ってきました。特に丹波流のきもと(生、酒母の一種)造りや麹造りに山田錦は欠かせません。ぜいたくとか、もったいないとも言われますが、灘の蔵元が育てた地元の兵庫の山田錦を使い続けることは、当たり前だと思います。
ただ本当は大吟醸、灘の生一本、特選等の高級酒以外に一般酒にもふんだんに山田錦を使いたいのですが、米の量が少ないことと、価格が高いので、普段飲むのには高すぎる酒になってしまいます。山田錦が他の酒造好適米と同じくらいの価格なら、いくらでも使いたいというのが本音ですね。


神戸:少々厳しいご意見ですが、ご存知の通り山田錦を作るには適地適作ということに加えて、相当の技術が要求されますのでなかなか難しいですね。


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