●良い材料と自然なバランスの発酵で所期の目的の酒に到達させる
神戸:これは経営の考え方、路線の選択の問題ですが、戦後先代が学んだ先進的な醸造技術を大量生産の安価な酒を生産する方向に使わずに、安定して質の高いものを求める方向にお使いになったわけですね。
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| 左:神戸組合長 右:福光社長 |
福光:はいそうですね。無論いろんな紆余曲折がありましたが、米の品種とその組み合わせについて多くの研究をして来ました。
その結果、酒造好適米というものは大変意味があり、なかでも兵庫の山田錦と言うものは誠に良く出来た米であって、吟醸・大吟醸を造るのに最適であるばかりでなく、そんなに磨かなくとも、70%位で非常に美味しい酒が出来る。
それは他の要素、例えば工程管理などを変えても追いつかないくらい差が出る。我々が言っているだけでなく、市場調査をしてみてもはっきり結果が出る。
神戸:今回こうして蔵元巡りをさせていただく中で、同様の言葉を各お蔵元から何度かいただいておりまして、意を強くすると同時に責任の重さも感じております。
福光屋さんの場合は純米蔵宣言にあるように、そこから徹底した方向に行かれるんですね。
福光:はい、そこから僕らはある結論に辿り着きました。つまり、お酒は原料にお金を掛けた方がおいしい。
いいお米を使って無理のない発酵をさせる。つまり機械で人工的に制御したり制約を与えたり、何時に始めて何時までに終えるというような人間の経済・社会的な制約を与えることは、あまり酒を良くしない。
一番良いことは良い材料を使って自然なバランスで発酵させて、所期の目的の酒に到達させることだと言うごく単純な結論です。
うちが出している小冊子にくり返し書いていることですが、酒は人間が造っているのではなく、微生物が造っているので、米を一番おいしくお酒に出来るように微生物の環境を作っていくのが人間の仕事だということです。
神戸:農業も同じところがありますね。あくまでも植物が土の中のいろんな微生物の助けを借りて作物をつくるわけです。あくまでも収穫物を作っているのは植物の方で、農家はこの生物界のなかで有用なものが生き易くなるような環境を整えてやる仕事をしているとも考えられるわけです。
そこのところで現実にはいろんな制約条件がありますが、実際に福光屋さんと似た考え方を採る農家も増えています。
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可能な限り機械を排除
(福光屋HPから) |
福光:現実には、生産工程から可能な限り機械を排除しました。ですからシステムを改良しようとなったとき人間がやっているわけですから、無限に改良が利くわけです。
これがある段階で機械化してしまいますと、その時の考え方で止まってしまいます。ところがお客さんの方がより進歩、洗練化するから毎年毎年その時点でのよりおいしいものが求められるわけです。
こんな考え方で造っていますから、10年前のうちの酒と5年前と現在のものを出して来ると、まったく違うものを飲んでいることになります。
こんな風に考えると、原材料の酒米にあまり良くない安いものを使って、製造工程で科学技術を駆使して良くするのは相当大変だと思うんですね。
それに販売段階でお客さんにアピールしづらいですから、宣伝に色々なことをやらないと行けなくなりそこに莫大なお金がかかりますよね。そんなことならうちは原材料に金を掛けようと思うわけです。
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