吟醸蔵巡り 第11回 天鷹酒造株式会社
代表取締役社長 尾崎宗範氏
●山田錦を使う吟醸酒は高級車の中のスポーツカー
蔵を案内する尾崎社長
神戸:それでは私どもの兵庫の山田錦とは、どんなところからお付き合いいただくようになったのでしょうか。

尾崎:初代の祖父がまた「辛口でなけれぱ酒でない」というのが口癖で、甘口全盛の時代にも頑として辛口酒一本槍でした。
前社長は辛ロでしかも「つるりと入って飲み飽きしない酒」を目指し、淡麗辛口酒を造り続け、そして「良い酒は良い原料から」と早くから全商品の高精白化をしていました。
そんな中でちょうど私どもの蔵の方向と合う昭和50年代の地酒と吟醸酒ブームになり、従来力を注いで来た設備と技術の充実に加えて、原料米を徹底して吟味しようとなって行き着いたのが、兵庫の山田錦だったわけです。

神戸:当時は品薄でご迷惑をおかけしたと思います。酒米として兵庫の山田錦のどのような点が天鷹さんでは評価いただいているのでしょうか。

尾崎:兵庫の山田錦は安心していられます。まず第一に品質が安定しているんですね。そしてうちが追求して来た高精白(注:精米度が高く米の外側を削り取り芯の状態に近付けること)に耐えることです。
それに加えて熟成に耐えるというか、春先に美味しく出来た酒が夏を越しても味がダレない。それどころか味が上がるんですね。
とは言え蔵元としては品質が安定していることがとても重要です。
安定していればデータが使えます。毎年、前年採ったデータを基にして、去年はこうだったから今年はこうして見ようと言うことができるんですね。それが出来て初めて「ピン」を目指すことができるんです。      


左:尾崎社長    右:神戸組合長
神戸:ありがとうございます。おかげさまで私どもの兵庫の山田錦は酒造好適米として高い評価をいただいておりますが、この山田錦の栽培環境は気候風土が密接に関係しており、棚田も多々あります。
こうした中での厳しい作業性や施肥の量やタイミング等に加えて、地区や区域毎での土壌の違いもあり、お米を作るこちら側でもお蔵元に負けないように、細かいデータを基にした指導体制を整備しつつあるところです。
一方、今や日本酒の消費量が減ってきています。それに加えて現在の経済状態の下、紙パックの酒に代表されるように日本酒の低価格が進んでいますね。
吟醸酒の将来についてどのようにお考えでしょうか。


尾崎:吟醸酒も日本酒の数あるタイプのひとつだと思います。しかも既に確立したタイプですから無くなることはありません。
それで安い酒が一時たくさん出たと言っても、長い目で見れば大丈夫だと思います。
自動車でもそうでしょう。トヨタ1社でもソアラやクラウンがあり、一方でビッツがあるわけです。
つまり高級車と大衆車の両方があって、初めて自動車の世界が構成されているわけです。
私は山田錦を使うような吟醸酒は高級車の中のスポーツカーだと思います。
兵庫の山田錦を使った吟醸酒を選ぶと言うことは、ソアラが良いのか、フェラーリが良いのか、ランボルギーニが良いのかと言う事に近いでしょうね。


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