●地域リーダー 藤原さんのお住まいの和田地区だけでなく、別所町とその周辺地域のほとんどの農家がかつて「金南風」(キンマゼ)を栽培していた。
藤原さんも同様だったが、酒米試験地の依頼で酒造好適米の新品種や、新技術である直播の試験栽培に取り組むなど酒米への深い関わりと、どちらかと言えば農家の得意でない新しい事への挑戦、そして金南風から山田錦への転換推進に努力された。
藤原さんご本人は「リーダー?そんなことないよ、農業はわからんことばかりで、JAさんに教えてもらうばっかり、リーダーはJAさんですよ」と謙遜されている。
●作付け
本格的な山田錦の栽培は平成になってからで、それまでは前述のように、酒造好適米新品種等、色々な試験栽培の一環として山田錦栽培にも関わったとのこと。
●圃場の状態
河川を挟んだ平坦な地域で田圃の土壌は"壌土"だが少し掘ると石が出てくる所もある。
丁寧に代掻きをしても一度入れた水は3日程しか保てないとのこと。
ただし用水は美嚢川の下流で加古川との合流地点にも近く豊富にあるとのこと。
圃場整備事業を完了してから30年余り(昭和47年頃完了)にもなるので、土はかなり落ち着いて、事業導入以前のように作りやすくなったとのことです。
●地域農業の状況
和田地区は住宅が一箇所に集まり、集落と山、山と田圃の境界がはっきりしていて、藤原さんの家の玄関に立つと、山田錦を栽培する田圃全体が見渡せると言っても過言ではない地形です。
しかし、和田地区を含めた別所町は、田圃がまとまって広々としているものの住宅団地や市街地が近くまで迫り、地場産業の金物生産の発展と相まって、営農活動は逆に何か肩身が狭そうな感じがします。
阪神間にも近いために野菜栽培も盛んですが、生産者の高齢化と農業後継者の問題は難しいようです。
藤原さんも「今は営農組合の組織が無いので、転作田の管理も各個人が行っているが、近い将来、山田錦の組織的栽培等、JAさんに指導してもらって「組織化」・「協同化」を考えなあかんなあ」と不安と期待の入り混じったお気持ちの様子でした。
●減反問題
減反の割り当て面積と転作田の活用状況をお聞きしますと、「転作田は無いよ!減反はしてないよ!」とのお答えに「何故ですか?」と改めてお聞きしますと、「栽培面積が1haを越える農家を含め10軒ほどの農家が、稲を作らないので和田地区全体の減反面積の割り当てが達成されてしまうので、やらんでもええんや」とのこと。
その後続けて「減反せんでもええのはありがたい話やが、地域として考えたら寂しい話や」とおっしゃいました。
●山田錦について
山田錦は手がかかる品種ですが、これからも山田錦を作られますかとお尋ねすると「これまで山田錦生産農家は見た目が良くて、量を多く穫る競争をしていた傾向が無きにしもあらずだったように思う。
これからは山田錦を使ってくださるお蔵のご意見をもっとつぶさに聞けて、お蔵の希望に適った山田錦が作れると良いな」と思いを込めた目で語られました。
●エピソード
今からちょうど30年前の圃場整備事業が完了して最初の年に、山田錦を植えられたそうです。
土を大きく動かすと、植物を異常なほど成長させることがありますが、
当時はそんなことになるとは分からなかった上に、山田錦は元々草丈の長い倒伏しやすい品種で、刈り取りには大変苦労されたようです。
ご本人の言葉を借りると「圃場整備をして最初の年に山田錦を植えたんやけど、土を入れ替えているのに加えて、肥料を入れてたんで稲が成長し過ぎて倒れてしまい一面ムシロを敷いたようになった。
苦労して全部手で刈ったけど、小米(屑米)やらなにやらで、この年に出荷出来る山田錦は無かった」とのことで、稲作りは苦労した年ほど報われないと昔から言われていますが、正にそれを地で行ったお話でした。
●農業に対する思い
藤原さんは「安全」で「安心」な、そして「環境」に配慮して作ったお米で、お蔵元や消費者の皆さんに「顔の見える農業」を、との想いを強く抱いていらっしゃる方だとお見受けしました。
特に「お蔵元との交流こそが、山田錦を作る手応えと、栽培方針の"道しるべ"つまり方向性の確認になるのでは」とおしゃったことが印象的でした。
|
| <コラム>取材ノート |
藤原さんとは、今回の取材が初めてのお付き合いになりました。
ご自宅と三木総合営農経済センターとは目と鼻の先でしたので、センターの事務所でお目にかかりました。
最初の印象は穏和な方だと思いました。お話しすると優しい丁寧な言葉使いの中に農業に対するキチンとした考え方(農業以外も同じだと思うが)を持たれた方だと感じました。
話題が栽培のことになると「○○肥料はいつやったらええんや」「○○○農薬の散布時期はいつ頃や」とか、インタビューそっちのけになり、話が一段落すると「えーと、なんやったかいな。せやせや」と元の話に戻るののくり返しでした。
|
|
|
|
|